『筒井康隆自伝』(筒井康隆)

――
 原宿駅前の新居には毎夜のようにSF作家たちが押しかけて馬鹿話に夢中になった。酒も飲まず料理も取らずよくまああれだけ夢中になって馬鹿話ができたもんだ。それだけ今まで自分たちの感性に訴えかける話のできる仲間がいなかったのである。肝心の馬鹿話の内容は全く忘れている。当時の自分か誰かのエッセイを探せばいくつか見当たるだろう。星新一が「命短し襷に流し」と言った時には伊藤典夫が笑い転げた。伊藤典夫は若年ながら天才少年として認められていた。今から考えたら夢のような日日だったなあ。夜、おういと声がするのでベランダから外を見ると道路に小松左京と星新一が並んで手を振っているのだ。
――


【目次】
芽吹いて蕾ー幼少年期
ヰタ・セクスアリスー少年期
喜劇への道ー青年前期
笑いと超現実ー青年中期
波涛に乗ってー青年後期
さらば中間小説ー中年期
老体化?老大家?




この記事へのコメント