『怖い家』(ジョン・ランディス:編集、宮﨑真紀:翻訳)

――――  このアンソロジーに登場する屋敷は、たいていが(すべてではない)十九世紀以前の伝統的な幽霊屋敷だ――今にも崩れそうな大邸宅、暗い廊下、鍵のかかった扉、四柱式ベッド、溶けた蠟燭、そう、エドガー・アラン・ポーの「アッシャー家の崩壊」の屋敷そのものだ。そこには決まって何か怪しげな過去がある。人が死に、何か恐ろしい事件が起き、邪悪に…

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『愛書狂の本棚 異能と夢想が生んだ奇書・偽書・稀覯書』(エドワード・ブルック=ヒッチング、ナショナル・ジオグラフィ…

――――  奇書の棚は、こうして世界中から時代を超えて集まってきた本で次々と埋められていく。不可視インクの本、死をもたらす本、あまりに巨大でページをめくるのに発動機が必要な本、ページ数が多すぎて宇宙さえ破壊してしまう本、食べられる本、着られる本、皮膚や骨や羽や毛で作られた本、魔導書、呪術書、錬金術の巻物、告解の書、「食人呪文」と呼ばれ…

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『獣たちの海』(上田早夕里)

―――― 「我々は同じ海上民であっても、これほどまでに考え方が異なってしまった。おまえたちは陸の技術と価値観を受け入れて海の文化を捨てた。記憶まで捨てて都市に適応しようとした。いよいよ、世界の終わりが訪れるのだ。命を何よりも尊いと考えるなら、それも選択肢のひとつだ。おまえたちは、命の重みを一番に考えるがゆえにその生き方を選んだ。いまは…

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