『猫沼』(笙野頼子)

―――― 「痛い」と言わずとも症状をいちいち、残している。なので読者には私の生命の人間の本質的部分だけ伝わっていた。勝手に言うがそれが私の文章の良いところなのだ。構造のない細部が真実を伝えるというのを実践して来て、自分のだるさや難儀さが他人と違うものだとは理解出来なくても人には通じた。同時に、同じ病気の読者が複数三十年来熱心に読んでく…

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『色の濃い川』(松木秀)

―――― 政治家は全員偽善者ではあるがそれでいいちゃんと偽善をすれば ―――― たこ焼きにたこの死骸が混入とクレームがつきそれを認めた ―――― 青空に深刻なエラーが発生し再起動したら灰色になった ―――― 四十五歳以上のひとの半分は拾われてきた橋の下から ―――― 徹底的に季語にはならぬものとしてスマートフォンは昼夜…

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『詩篇Aa』(高塚謙太郎)

―――― 新しいシーズンやリーグのルール、新しい世紀や新しい元号、新しい私たち、は新しかった すべての言葉は五線譜に起こすことができた 新しい美しさに存分に満たされながら上位層のさらに上澄みだけが、私たちの身体だった 身体は言葉だったし、言葉は私だった 愛してます、は愛していることだった 私とは表現だった 苦心のあとがきち…

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