『令和の雑駁なマルスの歌』(町田康)

――――  けれども人々はこれに逆らえない。なぜなら人々は優しさを求め、優しさを願っているからである。またそれと同時に優しさを恐れてもいた。なぜなら優しさの集団は優しくない者に対しては酷烈で、多くの場合はこれをはげしく糾弾し、これが滅びるように仕向けたからである。  もしそれが自分に向かったら。  と考えるとき市中の人々は優しさの…

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『ある実験  一人選べと先生が言った』(両角長彦)

――――  石井は、実験について中平先生から聞き出そうとした。しかしはずみで先生を殺してしまったため、それができなくなった。それでもなお石井は、実験について知りたいと願った。中平先生の息子を誘拐し、人質にとってまで、なぜなんでしょう。この実験の何が、それほどまでに石井をひきつけるんでしょう? ―――― 文庫版p.71  …

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『ネコヅメのよる』(町田尚子)

―――― 「ついにこのひが きましたね」 「いよいよですね」 ―――― 「まちがいない こんやだ」 真夜中、家々から出てくる大勢の猫たち。大規模猫集会に集まった猫たちがいっせいにたちあがる。「わあ! でた!」  飼い主が留守にしているとき猫が何をしているのかを描いた『ねこは るすばん』の作者が、飼い主が寝ている間に猫が…

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