『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』(高山羽根子)

――――  おばあちゃんの体の中で一番きれいなところは、まずまちがいなく背中だった。こういうことは私みたいな子どもがかんたんに口に出しちゃいけないと思っていたから、家族にきいてみたことはないし、みんなはそのことに気がついていないかもしれないけれど、これは事実として揺るぎがなかった。 (中略)  見ていると急に、おばあちゃんの背中は…

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『SFマガジン2019年10月号 神林長平デビュー40周年記念特集/ジーン・ウルフ追悼特集』

 隔月刊SFマガジン2019年10月号の特集は「神林長平デビュー40周年記念特集」および「ジーン・ウルフ追悼特集」でした。 『ユニコーンが愛した女』(ジーン・ウルフ:著、柳下毅一郎:翻訳) ――――  キャンパスの西はじ、駐車場は町の中心からうなり声をあげて流れる鋼鉄とゴムの川を送りだす。向こう岸には香りよい松並木。そこを…

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『肺都 アイアマンガー三部作3』(エドワード・ケアリー:著、古屋美登里:翻訳)

――――  なんという夢のような、めくるめく物語であることか。  全三巻を読み終えた方の多くが、アイアマンガーの物語に四巻目がないことにあらためて狼狽え、茫然としていらっしゃるのではないだろうか。訳者としても、これでクロッドとルーシーとお別れかと思うと残念至極であるけれども、こうして全巻が無事に刊行されたことに心から安堵している。 …

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