『七人のイヴ (2)』(ニール・スティーヴンスン、日暮雅通:翻訳)

―――― 「地球上のすべての民族国家、その政府と憲法は、もう存在しないということだ。軍事および民間の指揮系統についても同様である。それらに対して捧げた誓い、誓った忠誠、感じた忠義、手にした市民権は今、永遠に消滅した。〈クラウド・アーク〉憲法によって与えられる権利こそがそれぞれの権利であり、それ以上でも以下でもない。各人は〈クラウド・ア…

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『滑走路』(萩原慎一郎)

 非正規社員として使い捨てにされる若者が短歌にかけた思い。J-POP歌詞をめざしてもがいた記録のような悲しみの歌集。単行本(KADOKAWA)出版は2017年12月、Kindle版配信は2018年10月です。 ―――― 箱詰めの社会の底で潰された蜜柑のごとき若者がいる ―――― シュレッダーのごみ捨てにゆく シュレッダー…

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『職業、女流棋士』(香川愛生)

――――  思い出そうと思えばどの経験も昨日のことのように思い出せます。自分への怒り、はらわたの煮えくり返るようなマグマのような感情が押し寄せてくるのです。でも感情に流されていては、感情的な将棋しか指せません。傷はうまく意識から消すことも大切です。時間がやわらげてくれた深いところに眠っている傷がたくさんあるのです。きれいごとのように決…

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