『青挿し』(中村梨々)

―――― 言葉なんていらないの 世界で 誰よりもしあわせなわたしを 春という ―――― 『スプリング・エフェメラル』より  季節感と色彩にあふれる視覚的な言葉の数々、その隙間から子どもの頃に感じていた恐ろしくも懐かしい何かの気配が立ち上ってくる。少女漫画の感性を見事に詩に翻訳してみせた『たくさんの窓から手を振る』『せ…

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『短歌と俳句の五十番勝負』(穂村弘、堀本裕樹)

―――― 堀本 よくこの連載の読者に言われたんですよ。「堀本さんと穂村さん、全然テイストが違いますね」って。そこがおもしろい、と。 穂村 ジャンルの違い以上に、気質や体感が違うタイプですよね。 堀本 そうですね、本当に。俳句と短歌というジャンルの違いだけじゃなくて、お互い持っているものの出し方とか書き方が全然違うので、そこ…

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『猫は踏まずに』(本多真弓)

―――― わたくしはけふも会社へまゐります一匹たりとも猫は踏まずに ―――― 十年を眠らせるためひとはまづ二つの穴を書類に開ける ―――― 後輩のカラータイマー点滅すあとはわたしがやるからやるから ―――― てのひらをうへにむければ雨はふり下にむけても降りやまぬ雨 ―――― リア充が爆死してゐるかたはらを手もあはせずに…

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