『時間のないホテル』(ウィル・ワイルズ、茂木健:翻訳)

―――― ホテルに泊まる人間は、ひとつの方向にしか進んでいかない。客が何千人いようと、かれらは自分の部屋からいちばん近いエレベーターに向かうだけで、逆方向に行ったらなにがあるか考えようともしない。しかし逆方向に進んでみても、まったく同じ廊下が現れ…… 「それがどこまでもつづく」ぼくは声に出して言ってみた。  廊下が一本だけ伸びてい…

続きを読むread more

『渡辺のわたし』(斉藤斎藤)

―――― 勝手ながら一神教の都合により本日をもって空爆します ―――― セブンイレブンからのうれしいお知らせをポリエチレン製で無害の袋にもどす ―――― 牛丼の並と玉子を注文し出てきたからには食わねばなるまい ―――― うなだれてないふりをする矢野さんはおそれいりますが性の対象 ―――― そっかそっかだねときにはねなる…

続きを読むread more

『星の林に月の船 声で楽しむ和歌・俳句』(大岡信:編)

―――― 天の海に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ                 柿本人麻呂歌集 中国の漢詩文からの影響、あるいはヒントがいろいろ指摘されている歌ですが、日本の古代詩歌で、これほど見事に天空の豊かさを幻想的にえがいた歌は他に見当たりません。 ―――― 文庫版p.21  万葉集から近…

続きを読むread more